自由恋愛主義の元祖に睾丸がなかった?

鉛筆の芯やチョークの匂いがするとなぜか学校へ行っていた頃を思い出す。
決して匂いフェチではないと言いたいところだが、スマホが出回ってる時代にチョークや鉛筆を持てる時点でどう弁護しても無駄だろう。アナログにも程があるもんだ。

個人的に学校生活は特に楽しかった訳でも、登校拒否したくなる程辛かった訳でもなかった。どちらかというと当時、授業中に存在感を消せることが唯一の取り柄だったので毎日はただただひたすら放課後を待ち望んでただけ。今になって学園ドラマを観ると「もっとグレたり、勇気を出して気に入ってたあの先生に告ったりすればよかったな」と思うし、少年漫画風に自分の青春に「悔いがない」とは堂々と言えないが、少なくとも「アベラールとエロイーズの物語」のようなオチを体験しなくて本当によかったと思う。

この二人は12世紀のフランスという大昔を生きてて禁止された恋愛で結ばれ、後世に残した恋文などで有名。まだキリスト教の権力が圧倒的だった当時、アベラールはノートルダム大聖堂付属学校で神学や哲学を型破りの教え方で名声を博する一方、容貌も良く学問に優れたエロイーズの家庭教師となる。20歳以上歳の離れた二人は熱愛に陥り、官能小説家さえ恥ずかしくなるような手紙を交わし、やがてエロイーズが妊娠することになる。

ドラマこそありがちの展開だと思われるがエロイーズとは正式に結婚してなかった上、先生である以前神父同然だったアベラールは許されない関係を持ち、不祥事を起こしてしまう。それどころかエロイーズの保護者の恨みを買い、最終的に睾丸を切断されるという、32年にわたって放送され続けた「3年B組金八先生」にさえ見れなかった酷いオチになる。しかしこういう悲劇性を持ってるからこそアベラールらはフランスの「ロミオとジュリエット」とよく喩えられ、今二人が眠ってるペール・ラシェーズ墓地に花が綺麗に咲いてるのだ。

著作「アベラールとエロイーズ 愛と修道の手紙」
著者 :アベラール
出版社 : 岩波文庫

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