
キャプテン翼を別な名前で呼んでしまうフランス人
今年の夏、最も注目されるイベントといえば、それはオランダチーズ早食い選手権でなければ、ロンドンで主催された脚フェチ向けの映画祭でもなく、当然、東ヨーロッパで初めて開催されたFIFAワールドカップである。
フランス代表の大スターになったジダンたちの大活躍でフランスが初優勝を果たしてから、ちょうど20年が経とうとしていたせいか、今度も少々期待してもいいのではないかと皆がテレビの前でドキドキしながら、全試合を観戦し、決勝が迫れば迫るほど情熱的になっていた。
凄まじい脚の速さで脚光を浴びたエムバペや機敏さやパスのセンスなどで非常に優秀だと認められるグリーズマンの他に、今回なぜか一点も取れなかったジルーという選手達のおかげでフランスが再び優勝をし、全国が一斉に盛り上がることになった。これはキャプテン翼と何の関係もない自慢話だろうとそろそろ呆れられると思うが、実は関係がなくもないです。
90年代頭、まだクールジャパンの時代が到来してなかった頃、フランス人の子供は皆、学校が休みだという水曜日の朝、毎週、テレビで放送されるキャプテン翼に夢中だった。ただ当時、「ツバサ」という苗字はフランス人に非常に発音しにくいと判断され、「オリヴィエ」となぜか改称された。今回のジルー選手も下の名前がオリヴィエという訳で、その超人気キャラクターを連想したフランス人が大勢にいたという。ツバサの名前を変えた時点で作品名を変える必要も当然あったのだが、そこもびっくり。ゴールキーパー役の若林が容赦なく「トマ」に改名され、あだ名としてトムと呼ばれた設定なので、作品自体は「キャプテン翼」ではなく「トムとオリヴィエ」というタイトルでフランスでも名作になった。
この適当感こそがおフランスらしいといえばそうかもしれないが、今回の優勝が示すように、真面目にやる時はフランス人だって真面目にやる・・・と言いたい気持ちはあっても前日、革命記念日を祝うアクロバット飛行で三色旗の色を間違える国ですから何の主張もしません。
著者 : 高橋陽一
出版社 : 集英社
Noisette Press 55号 (2018/08)




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