
哲学、又の名をフィロソフィー。
その単語を聞くだけで、プラトンの髭面を思い浮かべながら、堅くて難解な話になるのではないかと心配する人は多いはず。一般教養はともかく、フランスの高校卒業試験には必須な科目なので、高三の時にほとんどのフランス人はその授業を受けることになる。まだ理解できるかどうか定かではない年頃にかかわらず、古代ギリシャの思想家から20世紀の歴史に名を残したサルトルなどの作品を読み漁る。基礎知識がないため、いきなり内容の難しい本にぶつかって、哲学が嫌いになる人がほとんど。
一方、禁欲的に厳しく身を持する人がストイックとよく言われるのは、ミニマリストで素朴な人生を説くストア学派から由来すると同様に、有名な哲学家の学派などの名前が形容詞化して、日常会話にしょっちゅう出てくるほど、哲学が生活に浸透している。
カントやヘーゲルのように、ドイツの本格的な思想家はやたらに長くてわかりにくい文章で、決して哲学への入門として向いてないと思いますが、ノルマンディー出身の60歳前後のミシェルオンフレは、誰もがわかるような単語を用い、誰もが興味ある問いにある種の答えを出そうとしながら、哲学のその固い枠をぶっこわし、読む側の関心を巧みに引き、哲学の定義を定めなおす。フランス語ではもはや百冊以上を書き、快楽主義者や無神論者である彼は、現在フランスで間違いなく一番人気な哲学家である。
作者が反哲学教科書というタイトルにしたのは、哲学自体に何らかの反対を示す気があったからのではなく、教科書が燃やされるべきだと思っていたからでもない。ただ、高校生が使う一般的な教科書に非常に不満を持ち、哲学というのは我らが普段悩むことにもっと役に立つものだとアピールしたかったからだと思われる。哲学に挫折した方、或いは哲学に触れてみたいと思う方に、逸話や皮肉に満ちるこの一冊はオススメ。
著者 : ミシェル・オンフレ
出版社 : NTT出版
Noisette Press 53号 (2018/06)




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