
ニュースに耳を傾けば大体毎回「〇〇問題」の話をされる。例としてはここ数十年日本でもフランスでも一番頻繁に取り上げられるのはいわゆる年金問題。数学の授業と違ってここは出される問題にどうやら「正解」がないようで、労働者を代表とする組合と与党の間に揉め事がいくら繰り返されてもいつも未解決に話が終わる。
無理もない。値上げしてる中、賃金を上げず働く期間だけ伸ばされたら、金八先生すら「けしからん!」と黒板にチョークを投げたくなるはず。議員達は市民の声を聞く耳も持たず、説明も下手で賄賂や乱れた私生活を正当化する時の弁が何故か立たなくなってるので奇妙なものだ。今のフランスでは何が起こってるかというと、仏政府は年金の支給を開始する年齢を62歳から64歳に引き上げようとしてる。こんな嬉しくない「おまけ」は当然とんでもない不満を爆発させ、全国各地で抗議デモが連日続いてる。
流石にコンコルド広場でギロチンは出されてないが、参加者が百万人以上だと報道されるデモの中に暴徒もいるので、今のパリではやたらに呑気なエミリーやアメリさえ散歩する気にならないはず。しかも清掃員もここ数週間同じ理由でストに入り、ゴミが回収されず道端で溜まる一方。当然、風で運ばれる匂いは香水文化を誇るこの国でなかなか新鮮だ。その中でブルジョワなエリアに駐在する日本人を初め、こちらの事情に疎い外国観光客はため息が多い。
花の都の話はどこに行ったと。
話が違うと。
確かにいつものテラス席で高ぇキヌアサラダを心地良く食えそうもないというのは非常に残念だが、それで抗議する人の老後不安が当分解消されるんだったら、結局安い犠牲なんじゃないかな。
著作「フィガロジャポン5月号」
出版 CCCメディアハウス (20.03.2023)
Noisette Press 111号 (2023/04)




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