
サンタクロースはゲス野郎
有名な英語のことわざがある。
それを日本語に直訳したら「本の中身をその装丁で判断するな」になるが、当然、古本屋さんの鉄則ではなければ、出版関係者のモットーでもない。基本的に比喩として「人を見た目で判断するな」という意味で使われている。
一方、同じ意味でフランス人は「その服装さえあれば誰でも修道士になれる」とよく口にするのだけど、もはや日本語の「馬子にも衣装」に近いので、日本人には割とイメージしやすいだろう。
とにかく判断する時は見た目で決して振り回されてはいけないと色んな言語で警戒されてきた僕ですが、ついこの前「やっちゃった」と思い知らされた。
場所はパリ、昔ちょっとバイトしたことのある日系の本屋の文庫売り場。
浅田次郎の『パリわずらい、江戸わずらい』を見た途端にその題名になぜか魅了され、ほんの躊躇もなく購入したが、帰宅中に読み始めたら内容が予想したのと全く違うことに気付いた。江戸はともかくパリの話はほぼない。
実は小説やエッセーよりどちらかというと著者は好きなテーマについて数ページでエピソードを語る短編である。さすが『鉄道員』の著者だけあって文才に満ちたすらすら読める一冊なので、その面では文句は全くないが、単純にパリについてもっと語って欲しかった。
正確に言うとその本の装丁で騙されたというよりそのタイトルで自分の想像が勝手に膨らまされたので、例の英語のことわざに妙に当てはまらないし、期待した自分が悪いけど、最終的にがっかりしたことに変わりはないのは事実である。浅田次郎を責めるつもりは無論ないけど、やっぱり客の視線を奪わせるために無理やりパリの2文字を入れる出版社は本当にせこいなとは思った。
ここまで読んで一体サンタと何の関係があるのとつっこみたくなる方は多かれ少なかれいると思うけど、特にないです。『サンタクロースはゲス野郎』はフランス人が全員見たと言っても過言ではない超人気なコメディーだが、記事のタイトルとその内容が合ってないのは出版社ほどせこい僕の意図に過ぎぬ。申し訳・・・あり。
著者 : 浅田次郎
出版社 : 集英社文庫
Noisette Press 72号 (2020/01)




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