パスカルの椅子より座布団一枚

あと十日間で今年も暮れるところ。1年間を振り返ろうとしたら、本来は、あっという間だったなとタメ息をつきながら時間の不思議さを実感するところだが今年ばかりは流石に全く違う心境だ。

終わりそうで終わらないロックダウンの最中にいるフランス人は皆、暇つぶしでずっと悩まされ続けた一年だった。不安に襲われながらも当初は外出禁止を機にコンマリの方が全然雑だと思われるほどのレベルで自分の家を徹底的に掃除したり、買って満足した本を読みあさったりしてある種の自由を味わえていたとは否定できない。

しかし社交性のある生き物としてはずっと一人で生きていくにも当然、無理がある。全てのテレビドラマが『半沢直樹』ほどよく作られてるならばまだよかったが、残念ながら、ネットフリックス作も駄作が相当の数だ。

フランス人が合理的な国民だと言われる理由であるパスカルが昔書いた通りに、我ら人間は何もない部屋で椅子にじっとしてられないからこそ最終的に不幸になる。若くして数学の天才だった彼はどんなキャパをしていたのかはわからないけれども、電波を拾えばどの国のド田舎までの行き方を容易に調べれるようになったこの時代では、むしろ何もない部屋でじっとしてられる方が確実にどうかしてるはずだ。

同じく社会学の父と言われている18世紀の哲学家であるモンテスキューは「読書に没頭するとどんな悩み事も消える」と言い残している。なんて響きのいい名言だと今年まで感心しきっていたが、逆に読書以外にやることがないと悩み事は増える一方だとコロナで思い知らされた。アメリカのタイム誌によると2020年は人類史上最悪の一年だったらしいけれども、どんな歴史を勉強してきたのかとツッコミたくなる。

金銭的な面を除いたら、古典を残した思想家を読み直すチャンスはともかく、人生観や自分の価値観と向き合える機会を与えてくれた一年だったので、その時点でそんなに悪くなかった(カモ)。

著者 : パスカル
出版社 : 岩波文庫
Noisette Press 84号 (2021/01)

コメントを残す

Tendances