
読むと長生きできるというエッセイの原点
17世紀のフランスといえば、太陽王と呼ばれたルイ14世の時代である。その王の名前を聞いただけで、ベルばらの香りを思い出す乙女がいれば、三銃士を連想する少年も少なくないはず。しかし花や男子より活字を選ぶ人なら、きっと何か別なことを思いつくだろう。当時を生きたモリエールという天才戯曲家は、フランス文学に凄まじい影響を与えた訳で、英語がシェイクスピアの言語であると同様に、フランス語は「モリエールの言語」になったのが、その時代なのだ。
ではその前は一体誰の言語だったのかという大胆な問いに、間違いなくモンテーニュの名前は挙げられるだろう。
モラリストであり、哲学者であるモンテーニュはボルドーの市長として勤めながら、『エセー』という作品の執筆に、自分の一生を捧げた。博識、知恵や逸話に満ちたこの名作は勿論、時間を経て幾度も日本語に訳されてきたが、今回はなんと、その日本語版から更にフランス語に訳される。まだ訳されない本が腐るほどあるのに、元々フランス語で書かれたはずの作品をなぜわざわざ日本語からフラ語に訳し直すのか?その目的とは?
簡単に言うと、それは言語の壁を突破したことで、作品の真髄そのものを味わい、改めてモンテーニュが如何にも近代的な思想家だったのかを実感しえること。
意味の失われた単語や難解な言い回しで書かれた原文より、あえて一回日本語という外国語に訳された文章の内容から、モンテーニュの言うことを聞き出し、21世紀の読者の我々に、文学作品の別な楽しみ方を提供するのがその本の目的である。
『エセー』の題名は英語のエッセーの語源である他に、試みに相当するので、その少々変わった翻訳プロセスの試みには最適といえば最適であるし、どちみちモンテーニュの作品を読んだことのある人は、読んだことない人より10年か15年を長く生きると、有名なお医者さんが名言を残してるので、結局は何語でもいいから、なるべく早くその名作を読んだ方が絶対にいい。
『エセー』 翻訳 :原二郎 / 出版社 : 岩波文庫
『Vivre à propos』翻訳 : Pascal HERVIEUX / 出版社 : Flammarion
Noisette Press 56号 (2018/09)




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