
現代フランスの英雄は、ヒゲのチビオッさん?
獣に拉致されたか弱い姫を救うために、命を惜しまぬ騎士の冒険多き中世は勿論、神話に満ちた古代ギリシャやローマ帝国も当然、どの時代を振り返っても、子供の心を躍らせるような武勇伝で溢れてしまう。12の功業で名を轟かせたヘーラクレースからイギリス軍を追い払ったジャンヌダルクまで、過去の歴史的な英雄はもはや、星の数。
一方、アメコミの実写版が次々に大ヒットするようになった現在、きっと西洋の子供に「好きなスーパーヒーローは誰だ」と聞いてみたら、ドラえもんや仮面ライダーと全く違う答えが返ってくるには間違いない。アメリカのアイコンであるバットマンと、派手な全身タイツにこだわるスーパーマンの名前は挙げられるだろう。二人とも馬鹿げた力で悪党を容赦無く潰す、かっこいい正義の味方である。しかし、この時代の英雄は全員アメコミ出身とは限らない。漫画もアメコミも老若男女に読まれるこのフランスで、もっとフランスっぽいヒーローがいて、その名前を知らぬフランス人はいないと言っても過言ではない。
このキャラクターは、50年代に誕生し、アステリックスという。決してイケメンではないし、何か超能力の持ち主でもない。そしていうまでもないが、全身タイツも当然、身につけていない。どちらかというとただズル賢くて、力より作戦に頼るタイプで、半分一休さん半分坂本龍馬のような人格だが、一見、ただのヒゲのチビオッさんのように見えなくもない。
時代は紀元前。カエサルは当時のフランスであるガリア全土を服従させたはずなのに、ある村だけが執拗に反抗。体力無双になる水薬の秘密を握るその村の住民はアステリックスにリードされ、優勢の侵略軍に必ず屈辱を味わわせる。弱小なものが強大なものを打ち負かす故、ローマ帝国と比較されがちのアメリカによく反発するフランス人を指すには定番な喩え。
今年のクリスマスにはアステリックスの新たな映画が出るし、パリから40分ほど離れた楽しいテーマパークもあるので、まだアステリックスの世界をよく知らない人には是非おすすめです。
作:ルネ・ゴッシニイ
画:アルベール・ユデルゾ
翻訳:松原秀一、新倉俊一、西本晃二、
出版社 : 奴葉社
Noisette Press 58号 (2018/11)




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